「ショーシャンクの空に」「デッドマン・ウォーキング」「クレイドル・ウィル・ロック」 | |
--- | 「ショーシャンクの空に」のロケ地は? |
(会場拍手) | |
TIM | オハイオ州のマンスフィールドです。 |
--- | アンディを演じるためにどんな準備を? |
TIM | 独房に半日間閉じこもりました。 たった半日です。警備上の理由で泊まることはできなかった。たった半日でしたが、独房にいる気持ちは想像できました。静寂さがどんな意味を持つのか、あのような場所で窓や光は何を意味するのか、雑音や絶えず聞こえるエコーは何を意味するのか、 |
--- | 映画のハッピーエンドは信用しないそうですね。本作品のラストは肯定的で満足できる内容ですが、あなたの信条に反しますか? |
TIM | ハッピーエンドが自然であれば構わないと思います。僕がハッピーエンドに抵抗を感じるのは観客に媚びるために意図的に作られた場合です。そんなのは観客をバカにしています。 「ショーシャンクの空に」で一番反響が大きかったのは労働者階級の人たちでした。その理由をずっと考えていて気づいたんです。 2人の男の固い友情に心を打たれたのではないかと。男同士でも美しい友情を築ける。そのことに気づかせてくれる作品はとても少ないんです。 |
(「ショーシャンクの空に]」一場面) | |
--- | 「デッドマン・ウォーキング」の話を。 |
(会場拍手) | |
--- | きっと嫌がるのでご起立は願いませんが今の拍手はスーザンへの賞賛でもあるでしょう。 |
(スーザン・サランドンうつる) | |
--- | 当初あなたはこの作品になかなか取り組まず業を煮やしたスーザンが道の真ん中でブチ切れたとか? |
TIM | 当時は「クレイドル・ウィル・ロック」の執筆に夢中でした。原作はすばらしいと思いましたがすぐに取り組みたい作品ではありませんでした。するとスーザンが--ブチ切れたんです。 脚本を書き始めると驚くほど早く完成しました。原作の力ですね。 |
--- | ショーン・ペンはこの場で死刑反対を訴えました。あなたやシスターの考えもあの映画に反映されていますか? |
TIM | あの映画で訴えたかったのは被害者の家族は決して過激な人たちではなく大きな悲しみを抱えた人たちだということです。彼らの怒りは当然です。ただその気持ちは加害者の母親も同じなのです。両者の視点を描こうと思いました。 物議を醸したり主張を訴えるのではなく痛みを抱えるすべての人を描きたかった。 |
--- | 絵コンテは使いますか? |
TIM | ほとんど使いません。僕は絵が下手ですし、誰も認めてくれません。下手なスケッチは描きますがそのとおりになることはないですね。 |
--- | ほとんどの重要な場面は空間が制約されていました。しかしその壁を乗り越えショーンとあなたはオスカー候補に、スーザンは受賞に至りました。どのように壁を乗り越えたのかいまだに分かりません。教えてください。 |
TIM | カメラマンのロジャーと事前に話し合いました。中心となる面接の場面でいかに変化をつけるか、スクリーンに何を映し出すか。もしスクリーンにまったく変化がなければショーンとスーザンの演技をムダにしてしまう。それほど大切なんです。 映画を成功させる95パーセントは役者の演技です。主役の2人が作品の世界に観客を案内するのです。旅のようなものですね。心を揺さぶる旅です。僕たちはそれを妨げてはなりません。映し方を変えるにしてもそれが目立ってはいけない。演技の邪魔になりますから。 僕たちが取った方法はあるものに焦点を合わせ、徐々にスクリーンに溶け込ませることでした。最初のクローズアップはショーンがスーザンを誘惑する場面。そこではあらゆる方向に光がありました。一番難しかったのはそこからの変化です。 ショーンの死刑執行が近づいた場面ではイメージと鏡と光を中心に撮りました。 |
--- | 1930年代の演劇界は混乱と興奮が渦巻き歴史的な出来事がありました。 若き日のオーソン・ウェルズとジョン・ハウスマンは火星人襲来のニュースで全米を混乱させ黒人キャストの「マクベス」で話題を呼びました。 なぜこの2人の快挙を映画化したのでしょうか。彼らは「ゆりかごは揺れる」を製作しました。これは労働者のためのミュージカルです。 |
(「クレイドル・ウィル・ロック」一場面) | |
--- | もともと失業中の演劇人を救うためのプロジェクトでした。 |
TIM | 初日に至るまでのドラマを描きました。 |
--- | 初日の-- |
TIM | 初日を控えた関係者たちが朝、劇場に行くと政府によって封鎖されていた。そして武装した兵士から上演禁止を告げられるのです。 |
(「クレイドル・ウィル・ロック」一場面) | |
TIM | 1000人が街を行進した。夏の暑い夕暮れだった。そして別の劇場へ着くとブリッツスタインが演奏を始めた。アメリカの演劇界だけでなく歴史を変えた出来事、そう言えると思います。 この映画は人々の意志の勝利を描いたものです。情熱や勇姿を描いているが暴力や戦争とは無縁です。人間の力や誇り、創造性を描いています。 |
--- | 編集は? |
TIM | 僕がやりました。スチール写真で。 テレビ画面は使いたくない。映画の深みというものはフィルムを切り張りすることで生まれるんです。フィルムのにおいも好きだし編集機も危険でスリリングだ。あれでケガすることもあるんだよ。 コンピューターだと眠くなる。まぶたが閉じちゃうね。 |
質問 | |
--- | それでは番組恒例の10の質問をします。ベルナール・ビヴォー考案です。 ティム、好きな言葉は? |
TIM | ”甘美” |
--- | 発音と意味が? |
TIM | 両方です |
--- | 嫌いな言葉は? |
TIM | 憎しみ |
--- | 夢中にさせるものは? |
TIM | 僕の人生と家族 |
--- | ウンザリするものは? |
TIM | 傲慢さ 無神経さも |
--- | 好きな音は? |
TIM | 笑い声 |
--- | 嫌いな音は? |
TIM | ドアが閉まる音 |
--- | 好きな悪態は? |
TIM | ”プッシー”(ピー) |
(会場笑い) | |
--- | 60人以上のゲストを迎えたが今の言葉は初めてだ |
TIM | みんなも好きでしょう? |
(会場笑い) | |
--- | では 他にやってみたい職業は? |
TIM | いつか教える仕事がしたい |
--- | 今日教えてくれた。 なりたくない職業は? |
TIM | 政治家です |
--- | 天国に着いたとき神から聞きたい言葉は? |
TIM | ”帰りなさい” |
(会場笑い) | |
--- | 今日ティム・ロビンスは私たちをすばらしい世界へと導いてくれました。 どうもありがとう。 |
(会場拍手、スタンディング) | |
(2人握手) | |
生徒達の質問 | |
生徒1 | 役者のマイケルです。あなたの作品で好きなのは「エリック・ザ・バイキング」と「ジェイコブズ・ラダー」です。コメディーと悲劇という対極的な作品ですが取り組み方に違いはありますか? |
TIM | コメディーを演じる方がはるかに難しいんだ。コメディーは単なる大衆娯楽だと高慢な文化人は言う。コメディーは芸術ではないとね。でもコメディーほど洗練された芸術はない。観客を2時間も笑わせるのは並大抵なことではない。それに成功できたらすばらしいと思う。 僕が好きなフランク・キャプラやブレストン・スタージェス監督は観客を笑わせるだけではなく問題提起もしている。 |
生徒2 | 俳優コース1年のジェイソンです。役柄に先入観を持つことはありますか?また監督としての立場から役者の持つ間違った先入観を正すことはありますか? |
TIM | 優れた役者は先入観を持たないものだ。特に悪役に関してね。善人であっても同じだ。善人にだって長所もあれば短所もある。 「ザ・プレイヤー」のグリフィン・ミルは自分が高潔であると信じた。その時点で良心を失ったんだ。 僕が思うに--殺人を犯すような人の目は狂気に満ちている。目を見れば分かるんだ。そういう人を見ると本当に怖いね。 地下鉄は格好の人間監察の場だ。さまざまな人がいてさまざまな顔があり、みんな異なる経験を持っている。地下鉄は最高の栄養源だよ。タクシーより速いしね。 |
生徒3 | 役者のデニスです。あなたのお話を聞いて目や体で表現することやコメディア・デラルテの概念を学びました。コメディア・デラルテから学んだことは何ですか? |
TIM | 仮面をつけることはとても勉強になった。今でも鮮明に覚えている。目の前に仮面が並べられた。アルレッキーノ、バンタローネ---そうドットーレ。先生はカーペットの上に仮面を並べるとその場にひざまずいてこう言った。”これらの仮面は役者だ” 各地の舞台に立った。イタリア、フランス、スペイン、北アフリカやドイツでも。 観客の笑いと涙を誘い子供たちに夢を与え痛みやエクスタシーを表現した。命を持つ本物の役者たちだ。ただの仮面ではない。仮面をつける前に敬意を払いなさいと。まず仮面と向かい合い、その声に耳を傾ける。時間をかけて。5分から20分間じっと見つめる。そして壊さないように仮面をそっと手に取り鏡の前に持っていき再び問いかける。その仮面はいったいどんな人物なのかと。 そうして初めて分かるんだ。コメディア・デラルテはただの喜劇ではない。 アルレッキーノはパンタローネに虐待される。パンタローネはケチなろくでなし。ひどい男だ。 これらのキャラクターが本物であり痛みがあるからこそユーモアが生まれるんだ。少なくともコメディア・デラルテではね。 |
生徒4 | こんにちは。やっと質問する番が回ってきたわ。私は「クレイドル〜」にエキストラで出演したんです。アメリカ研究も専攻しました。 私の質問は… |
TIM | 君を覚えてるよ。劇場にいたね。 |
生徒4 | 公共事業局の窓口にも。 |
TIM | 行列の中に…カールヘアだった。 |
生徒4 | ステキでしょ? |
TIM | そうだね。 |
(会場笑い) | |
TIM | 似合ってた。僕の映画に出たんだね。 |
(会場拍手) | |
生徒4 | あの作品を作る上で参考にした資料は何ですか? |
TIM | ジョン・ハウスマンの自叙伝を読んだ。ブリッツスタインの肉声も残っていた。 史実をすべて正確に再現することはできない。確かな真実はあるが、誰が何を言ったか--途中で何があったか--それは想像するしかない。 あの作品にも真実と想像の部分がある。 |
--- | 当校の学生が君の映画に出たとはすばらしい。他のみんなの健闘も祈るよ。 |
(会場拍手 スタンディング) | |
日本語訳 益江責子氏 |